良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案に対する附帯決議

平成11年12月7日
参議院国土・環境委員会

政府は、本法の施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。

  1. 賃貸住宅、特に民間賃貸住宅の居住水準が、持家の居住水準と較べて低水準にとどまっていることにかんがみ、その水準を向上させるため、国は、財政、税制及び政策金融の分野において、これまで以上に賃貸住宅に配慮した施策を展開すること。
  2. 本法の趣旨を広く国民に周知させるための広報活動を積極的に行うこと。特に、定期建物賃貸借については、契約終了後に紛争が生じることのないよう、①既存の建物賃貸借契約の更新には適用されないこと、②賃借人に対する書面の交付・説明義務を果たさなければ更新しない旨の特約は無効であること等、その内容に関してあらゆる方法を通じて十分な周知徹底を早急に実施すること。
  3. 本法は良質な賃貸住宅等の供給の促進を図ることを目的としたものであり、これによって賃借人の居住の安定が阻害されるようなことは意図したものでないことについて、国、地方公共団体等において賃貸人、宅地建物取扱い業者及び賃貸住宅管理業者に対する意識喚起のための方策がとられるよう努めること。
  4. 住宅建設五箇年計画の策定に当たっては、公共賃貸住宅や政策的融資に係る賃貸住宅について具体的な居住水準目標等を設定し、その計画的な達成に努めるなど、良質な賃貸住宅の供給の促進に関する実効性が十分確保されるようにすること。
  5. 住宅性能表示制度の普及を図り、賃貸住宅の性能評価が促進されるよう適切な方策を講ずるとともに、賃借人が賃貸借契約前に当該賃借建物の性能について知ることができるよう、性能表示住宅については、その住宅性能を宅地建物取引業法上説明すべき重要事項として追加することを検討する等、所要の措置を講ずること。
  6. 賃貸人が賃貸住宅の選択に際して的確な判断ができるよう、従前の建物賃貸借か定期建物賃貸借かの種別、家賃、住宅性能に関する情報等の提供や、各種の相談が可能となる体制の総合的整備を図り、その充実に努めること。そのため、国、地方公共団体、公共賃貸住宅の管理者、宅地建物取引業界等相互間における効果的連携がなされるよう、適切な措置を講ずること。
  7. 定期建物賃貸借制度の導入に当たっては、紛争の発生を未然に防止するため、国の主導により標準約款等を作成するとともに、賃借人に対する書面の交付・説明義務に関して、その事実を証明する書類を契約書に添付することや宅地建物取引業法上説明すべき重要事項として追加すること等について検討を行うなど、居住用借家や小規模営業用借家の賃借人などが不当な不利益を受けることがないよう、万全の措置を講ずること。
  8. 建物賃貸借に伴う紛争の早期円満解決に資するため、国民生活センター、地方公共団体の住宅相談窓口、法律相談窓口、消費者センター等における対応を強化するとともに、これらの利用が容易にできるようにし、さらに、受け付けた相談等の内容について整理・分析して、可能な限り公表するよう、適切な指導を行うこと。また、売買、賃貸借、住宅性能表示、マンション管理などの不動産に係る紛争について、その早期、適切な解決が図られるよう、あっせん、調停、仲裁等を行うための総合的な紛争処理機関の在り方について今後検討すること。
  9. 低所得高齢者、障害者、病気入院者などが定期建物賃貸借等において不当な差別を受けることがないよう、指導、啓蒙等特段の配慮をするとともに公共賃貸住宅においては、これらの者の入居がより容易になるような制度運用を図ること。
  10. 賃借人が当該賃貸住宅を処分しようとする場合には、賃借人が当該賃貸住宅を取得しその居住の安定化を図る見地から、賃借人に対する優先的な売却情報の提供に関する契約の在り方について検討すること。
  11. 法の施行後4年を目途とする建物賃貸借の在り方の見直し等に資するため、国は、本法第2条から第4条の定める国、地方公共団体等の責務に基づいて具体的にとった措置についてとりまとめを行うとともに、関係機関が受け付けた相談・苦情や紛争処理に関する内容の分析結果を収集するなど、居住の用に供する建物賃貸借等の実態について詳細な状況把握に努め、これらに関し定期的に公表すること。右決議する。