定期借家データベース

Ⅱ.定期借家で差別化を図る

厳選された優良な入居者が住んでいることをアピールできる。

定期借家制度の施行以来、全物件を再契約型で賃貸している。良い入居者には長く住んでほしいが、入居規約を守らないような方には退去してほしいと思っていた。 定期借家であれば、契約期間満了とともに迷惑な入居者に退去してもらうことができる。募集図面に 「迷惑をかける方には一定期間(最長で契約終了まで)で退去していただくことで、物件全体の環境を良好に保つ」旨を記載して、定期借家の利点を仲介会社に理解してもらっている。上京してくる学生の親は、隣にどういう人が住んでいるかを気にするので、迷惑な入居者とは再契約しないという貸し方を特に喜んでいる。

募集条件は普通借家と一切変わらず、定期借家だから成約率が落ちたということはない。

書 式

募集図面記載の文言

定期借家契約入居者様のメリット

入居者様はお引越しをして生活を始めなければ物件の状況はわかりません。たとえば、お隣に「困った方(夜中に騒ぐ・共用部分を汚す等)が入居された場合、定期借家契約ではそのような方を一定期間(最長で契約終了まで)で退去していただくことができますので、物件全体の環境を良好に保つことができます。優良な入居者にとっては住み心地の良い物件になります

ペット可で貸しても静かで綺麗。

犬や猫を飼う方を対象とした賃貸マンションで定期借家を活用。管理規約・飼育規約を入居者に遵守してもらうことが企画段階からの課題であり、その解決策として再契約型を選択した。契約期間は2年間、再契約料は0.5ヶ月。ルールを守らない入居者とは再契約しないことで、迷惑入居者の入居を長期化させない。敷金3ヶ月と仲介手数料1ヶ月は相場並みだが、家賃は同種の物件より2割高く設定。定期借家が条件であることに対し、難色を示した方はほとんどいなかった。

ルールを守れなければ退去してもらうと強調した結果、意識の低い入居者は事前に排除されたようで、竣工から8ヶ月経過したが入居者間のトラブルは一切ない。近隣からのクレームもなく、建物内は本当にペットがいるのかと疑問に思うほど静かで綺麗だ。

学生向け、在学中(4年間)限定の賃貸には借主のメリットが豊富。

卒業までの期間に限って学生に貸している。入居は4月1日から。解約は4年後の3月15日から25日の間(強行規定を除いては借主からの中途解約は不可)。以前から運用上この方式で貸していたので、既にこの方式が学生に受け入れられることは実証済み。
利点は、①留年していないか等を確認すれば退去時期が確定できるので、半年以上も前からゆっくりと募集でき、退去前から次の入居者が確保できる。(留年や大学院へ進む場合は、その期間だけ改めて契約する。)②先輩が入居している物件に早い時期から入居を約束できるので、借主の新入生も安心。しかも家賃発生は4月1日から。③卒業式の後に退去するので、空室期間はおおむね3月26日から31日までの6日間でありロスが少ない。④借主から見れば、卒業したら退去しなければならないほか、強行規定を除いては中途解約権がないというデメリットがあるが、そのデメリット分として家賃を1割、敷引きを5割安くしている。

6月初旬現在、来春の契約終了予定100戸のうち既に30件の入居予約が入っている。本格的な募集開始は6月末から開始。この仕組みにより、当社の管理物件は入居率100%。人気のない物件は、11月頃から家主に家賃減額を提案する。入居中の物件の来春の募集賃料の話なので、何ヶ月も空いてしまった後での減額提案に比べれば、家主の反応は決して悪くない。

書 式

契約条文

(賃貸借の目的物および条件)

第1条

貸主は、借主に本物件を、入居者が女子大生専用・学生期間限定の賃貸居住(男子禁制)として表記条件で賃貸し、借主はこれを賃借する。入居者は、表記のとおり、女子大生の卒業迄の学生期間限定の壱代限りの契約とする。入居者の変更は、一切これを認められません。
なお学生期間限定の定期建物賃貸借契約に付き、原則として再契約はされないことになります。また本物件の管理は、㈱***社が行ないます。

(賃料及び共益費等)

第3条

3 契約及び解約時の賃料等の計算は次のとおりとする。

A 入居日は、原則として平成14年4月1日とする。ただし新築物件の場合で、それよりも早く完成し、しかも本入居者が、早く入居することを希望する場合、または前入居者が平成14年3月25日よりも早く退去する場合でやはり本入居者が早く入居することを希望する場合。日数に応じて日割り計算とします。

B 解約時は、例年大学の卒業式が3月20日前後ですので、表記卒業年度3月25日が明け渡し期限となりますが、賃料は3月15日までは、それより早く退去しても必ず支払って頂き、それ以降3月25日までは、退去日まで日割り計算とします。(但し、前項記載の様に次期入居者と連絡の上調整がつき3月15日迄に退出しても、次期入居者が引き続いて入居した場合はその限りではありません。)

(契約期間等)

第5条 本物件の契約期間は、表記の期間に限定されます。卒業迄の学生期間限定契約となっていますので、くれぐれも厳守願います。貸主より借主への賃借物件の引渡期日を、原則として、平成14年4月1日とする。(第3条に記載のとおり4月1日以前に入居される場合は日割賃料とします。) また解約時に退去が遅延した場合に、次期入居予定者、および貸主に発生する損害等は借主の負担となります。

15年契約だが1ヶ月前予告で退去可能。ファミリー層の人気集める。

関西では家賃の5~6ヶ月分を敷引きする慣習があるため、短期の定期借家契約は向いていない。そこで、敷引きを了承してもらうため、ファミリー向け物件の契約期間を15年にした(非再契約型)。家賃を2年毎に見直すほか、借主からの解約申入れは1ヶ月前と明記。普通借家契約に比べてまったく遜色ない条件のため入居率も良い。

過去に立退き交渉で苦労した経験があり、普通借家契約はこりごりだった。借主には長く入居してほしいが、建物が古くなったときは退去してほしい。そう考えた場合、借主に解約権を与えた上での長期の定期借家契約は、家主の要望を素直に具現化したものだと思う。

20年間家賃を固定する代わりに、法人借主の要望を取り入れて建築。

木造2階建て全10戸の新築アパートを、医療法人に20年間の定期借家契約で借りてもらった。地主から建築相談を受けたとき、駅から遠いので通常の物件では難しいと考え、近隣の病院に看護婦向けの独身寮として提案。相場より1割安い家賃(原則として家賃は見直さない)にすることで、20年間の長期契約を締結できた。建築企画の段階だったので、借主の要望を取り入れ、外観やエントランスを女性向けにデザインできた。当然家主の収支は合っているうえ、家賃を固定したため家主の将来的な収入が確定した。

長期間借りてもらう代わりに借主の要望に合わせた建物にするという手法は、定期借家施行前から待望する声があった。しかし法律で、借主はやむを得ない事情があるときは解約できるとされたために、長期契約のメリットが薄れてしまった。もっとも、法人契約であれば借主(法人)には転勤・療養・介護等のやむを得ない事情が存在しないと言われているため、法人を相手としたこの手法は参考になる。
ただし、法人契約であっても入居者の変更を不可にした場合は、実際に住んでいる個々の入居者の事情が判断され、それがやむを得ない事情に該当するものであれば1ヶ月前の予告で解約できるとの見解もある。

賃貸住宅ではないが、定期借家本来の特色を生かした事例がある。建設会社に資材置き場として貸している土地で、借地人の建設会社から飯場に使う建物を建ててほしいとの申し入れがあり、どうしたら良いかと地主から当社に相談があった。建築費は1千万円。借主は飯場を建ててくれればずっと借り続けるというが、この不況下では永続的に借りてもらえる保証もなく、地主は消極的だった。

そこで、当社は3年間の定期借家契約を提案した。返還しない一時金として300万円、家賃は月30万円。家賃を増減できないよう特約で定めたので、建築費の1千万円は2年で回収できる。

建設会社は契約終了時に再契約してもらえるかを気にしていたので、「貸主も改めて契約できることを望んでいます」と答えた。定期借家を使えば貸し方・借り方に幅ができ、普通借家では対応できなかった案件も実現可能になることが分かった。

書 式

契約条文

第2条(目的)

乙は本件貸室を下記の目的で使用するものとし、使用目的を変更する場合には書面による甲の承諾を得なければならない。

目的:従業員専用宿舎

第8条(賃料等の改定)

甲及び乙は、本契約期間中は、賃料等の見直しは原則として行わないものとする。